健康に永く住まう工夫

自宅でおばあちゃんを介護してあげたい。そして自分たちの将来のことも考えたN邸


おばあちゃんの部屋を洗面所やトイレに近い場所にレイアウトされています。


トイレのスペースもゆったりつくられています。


バスルームは引き戸で車椅子でも楽に移動できます。


写真の左が汚物も洗える大きなシンク。


小さな窓からおばあちゃんの様子が見える工夫。


洗面・脱衣スペースはバスルームから出ると扇風機が使えるようになっています。

「年寄り 笑うな 行く道だもの」という言葉を聞いたことがあります。年をとれば身体的能力が劣るのは当たり前。誰もが経験していくことです。

バリアフリーとは身体の能力が弱った人のためのやさしい住宅のこと。例えば部屋と部屋の段差をなくしたり、階段に手すりをつけたり、トイレや浴槽を車椅子での移動が楽なタイプに取り替えたり……。その人の症状によって改修の種類も様々です。

さて、Nさんは、要介護認定を受けたおばあちゃんに痴呆の症状も出てきてバリアフリーを決断しました。そこには、長年医療施設に勤め上げた西本さんご夫婦がこれからの将来を安心して暮らせるようにとの思いも加わっています。つまり、おばあちゃんの介護と自分たちの将来設計を考えてバリアフリー住宅にリフォームしたのです。

「改築前の1階は応接間と食堂と台所、2階がおばあちゃんと私たちの部屋、3階が娘の部屋という構成でした。設計していただいた川端建築計画(川端眞)のアドバイスもあり、1階スペースにおばあちゃんの部屋とLDKを設け、余裕を持った洗面所・脱衣スペース、浴室・トイレも段差をなくして車椅子での移動ができるようにしました。鉄骨造りで1階の柱をすべて取り外して工事ができたのも幸いしました」

Nさん宅のリフォームは、おばあちゃんを家族のみんなで見守るような構成。みんなが居間に集まってきて、みんなでおばあちゃんを介護する考え方が生きています。「長年一緒に暮らしてきたので、家族みんなで暮らしたかったんです」

ほかにもやさしい配慮が随所に見られます。台所仕事をしながらおばあちゃんの様子がいつでも見られるように、ドアに小さな窓をつけたこと。おばちゃんの部屋からは、トイレや洗面所へつながっていて移動が楽なこと。トイレでは汚物を洗濯できるシンクを設けたこと。匂い対策としておばあちゃんの部屋に換気扇をつけたこと。などなど数え上げればきりがありません。

「これからますます高齢化が進みバリアフリー住宅にリフォームされる方が増えてくるでしょう。そんな方へのアドバイスは、設計をしていただく方、施工をしていただく方になんでも気楽に注文が出せる関係が望ましいと思います。設計についても、価格についても、それぞれ家庭によって事情が違うんですから」とご主人。

仲睦まじしいご主人の節也さんと奥さんの京子さん。

「介護される人もさることながら、介護する人が、精神的にも肉体的にもどれだけ負担を軽減できて介護できるかということ。建物という器で解決できることはそのほんの一部かもしれません」とも付け加えられました。

私たちが、建物というハード面だけで解決できない問題が余りにも大きい「介護問題」に改めて気付かされたS邸でした。